今現在、このサイトでは400点ほどのイラストを公開してますが、実はある事情があって公開を控えてる仕事がいくつかあります。
一般に印刷物を作る場合、まず最初に顧客にどのようなデザインにするか、サンプル案を提出します。(デザイン業界では「ラフ」「カンプ」と呼びます。)この時にデザイン上にイラストや写真のダミーを貼付けたりするのですが、大概は全国区の印刷物やネット上から拾ってきたものを貼付けて製作します。それをだいたいの叩き台(原案)とします。そこでオーケーが出た場合、私に依頼が来てオリジナルイラストを製作し、そのダミーと差し替えるのですが、これが結構難しい。ダミーに忠実に描き過ぎるといわゆる盗作、著作権侵害問題が発生します。かといってあまりアレンジしてしまうと、まるで別のものになってしまい、お客さんからは「ラフと違うやん!」となってしまいますし。何とか、それらの中間で収めようとはするのですが・・・。過去、ボーダーラインすれすれのものもけっこう作ってしまいましたね。ちょっと悩んで、そういう仕事は一応、お蔵入りとしたのです。
昔は、地方の印刷物が中央の著作者の目につく機会が少なかったのか、おおらかにお目溢しされてたのか分かりませんが、私の周りでも、わりと危ない作品がかなり散見してたように思います。今はどうでしょうか?ネットの普及なんかであまりおおっぴらな事は出来なくなったんでしょうかね?それともあんまり変わっていないんでしょうかね・・・?
盗作、著作権の論議は昔っからある問題です。しかも時代と共に考え方も変化してるようです。あからさまな二次使用やまんまコピー、トレース行為は今も昔も論外な盗作ですが、作品の骨子や表現の一部を他所から取り入れる行為は、最近は、オマージュとかリスペクトとかいう便利な言葉もあって、わりと寛容になってるのかな、とも思います。が、一方では元になった作品が存在する限り、アレンジを少々加えてたとしても盗作は盗作である、という厳しい見解も耳にしますが。
日本人がオマージュやリスペクトなどという言葉で誤摩化す時の心根は大嫌いですが、個人的には、二次使用やまんまコピー以外はある程度寛容で良いのではないのかな、と考えています。極論すると、この世のほとんどの作品が互いに真似て、真似される輪の中で生まれているのではないかと思います。その中から時折、全く新しい発想、新しい概念が生まれもします。あまりに著作権利というものを遵守し、少々の真似や影響を盗作と断罪してしまうと、やがてありとあらゆる分野でアイデアが枯渇して、逆に新しいものを生み出す素地を潰してしまうのではないのかな、と思うのです。
このサイト作るにあたって知ったのですが、どこか他所のサイトの文章を自分のサイトに載せる場合、「引用」という宣言をして引用先をキチンと示しておけばオーケーだそうですね。まあ、文章の世界では昔からの当たり前のルールなんでしょうけど・・・。そういえば、漫画家の小林よしのり氏が自作の漫画のコピーで勝手に本を作られて争ってた、著作権侵害か引用かという裁判があったことも思い出しましたが、ああいう悪質な例は個別に争うという事で、基本はこの「引用」の考え方でいいんじゃないかなと思います。
つまりこっそり使うから不快という事が大きいと思うんですよね。堂々と引用というか「参考」「参照」と宣言することで、よほど論外なコピー行為以外は許容するという方向でいいんじゃないかと。テレビ、映画、本、雑誌などは、テロップや巻末で参考文献や参考画像、参考映像の出典を記載し、広告などそれがいちいち出来ない場合は求められた時に提示できるよう、案件ごとに書類を作成して、どこかまあ、管理機関を設定してそこに提出するとか・・・。今はネットがあるから、登録作業もさして面倒でもないんじゃないかなと思います。まあ、それでも小さな案件を数多く扱ってる所には正直、面倒でしかないでしょうけど、それがルールと定めれば、少しずつ定着するんじゃないのかなー、なんて思います。
それに製作側の手続きだけなく、鑑賞する側にとっても好きな画や映像や音楽が、どういうものに影響されてる、影響を与えてるか、というのがわかれば、なにか作品のルーツのようなものが伺い知れて、楽しいんじゃないでしょうか?
まあ、盗作行為で多大な被害を受けた方や著作権うんぬんも商売やビジネスとして考える勢力からすれば甘い考えだと笑われてしまうんでしょうがね。はてさて・・・。